「そして明日の世界より――」レビュー

2週間前にレビュー書きますといっておいてなんですが今更レビューなんぞして見ます。
実は自分超有名エロゲーレビューサイト「ErogameScape -エロゲー批評空間-」のアカウントを持っておりまして、
今回はそちらに書き込んだ内容に沿って紹介させていただきます。
以下ネタバレになりますので構わない方は続きをどうぞ。




そして明日の世界より―― ErogameScape -エロゲー批評空間-


まず物語はかつて炭鉱で栄えた離島で始まります。

主人公葦野昴は平凡な18歳。昔から好奇心旺盛で物怖じしない一本気な男です。
その主人公の向かいの家に住む日向朝陽日向夕陽は物心ついたときから一緒に遊んでいてほとんど家族と変わらない存在でした。
その中でもおっちょこちょいな妹・夕陽の面倒を見てきたからか昴はとても包容力のある人間として成長していました。
学校では昔から活発で男友達のように接して来た親友・樹青葉や、体がもともと病弱で環境の良いこの島に転校してきた美少女・水守御波らと一緒につつましいながらも楽しい生活を送っていました。


しかしそんな平和な主人公達の世界が一変する出来事が起こります。
『この小惑星は秒速三十二メートルで大気圏に接触、僅かに大気表面を滑って軌道がズレた後に…地表に激突します。』
いきなり全人類の余命が3ヶ月と宣告されたのです。
普段は穏やかで本島の喧騒とは無縁と思われたその離島でも着実に忍び寄る恐怖。
誰もが平静を保てない中、主人公・昴は何を思い、どう残りの3ヶ月を迎えるのか…

以上が物語の大まかなストーリーとなります。
原画はetudeの前作「巫女舞〜たった一つの願い〜」も手がけ、複数のライトノベルの挿絵も担当する植田亮さん。
シナリオは前年のヒット作「遥かに仰ぎ麗しの」を手がけた評判上昇中の注目作家・健速さん。
この二人の合作ということで美麗なグラフィックで且つ、非常に高クオリティな作品が期待されました。


見てもらえればわかるとおりとてもシリアスで重い作品です。
とにかく小惑星衝突を知らされて以降の展開は非常に鬱っぽいので苦手な人は間違いなくいると思います。
事実自分はその部分で結構凹んでなかなか食指が動かずに放置していましたしw
またそれ以前の平和な日常を描いたオープニングパートですがこちらはこちらで
淡々と平凡な毎日が結構細かく描写されているので、本筋に入る前にだれる人もちらほら。
というわけで物語を快適に薦めるためのテキストという意味ではあまり高得点はあげられませんね。


次に肝心のシナリオの部分ですがこちらはかなり満足できる内容かと。
ネタバレになりますがルートは各ヒロイン4人分ノーマルルート
それを全てクリアした後のAfterの5種類あるのですが特に青葉、御波、ノーマルは素晴らしかった。
攻略サイトを見れば基本的に4人をクリアしてからノーマル→Afterの流れがオススメ
と表記されているんですが、何を間違ったのか自分は真っ先にノーマルをクリアしてしまいましたw
おかげで1週目から凄く感動できたのですが、それで満たされてしまい、
その後はお気に入りだった青葉をやってずっと放置してしまうという大誤算w
しかしレビューサイトなどでAfterをやって本当のクリアです、という記事を見てから一念発起。
残りのルートを最近がんばってやっていたというわけです。


ただ批評空間にも書いたんですがとにかく日向姉妹のキャラが弱いにもほどがある。
残りを夕陽→朝陽→御波の順に攻略したんですがもう御波までが精神的に遠かった…
夕陽に関してはまず構ってちゃんな妹キャラという自分が一番苦手なタイプだったのが辛かった。
しかしそこはそれ、さすが健速というべきか、見るものをはっとさせるようなシナリオで
帳尻を合わせてきた感じで、やってる間は面白く感じなかったものの読後感は非常によかった。


最大の問題は姉の朝陽ルートです。
あらすじとしては今まで夕陽の面倒を昴にまかせっきりで、自分は死んでしまった母親の代わりを
必死に演じてきた朝陽だったが、小惑星問題以降、精神的に強かったはずが急に弱くなり、
いままで甘えられなかった分昴に頼って強い自分に戻れるよう自信を取り戻そうとする。
ここで問題なのが妹の夕陽の扱い方。
夕陽が昴に好意を持って甘えているのは周知の事実であり、その昴に自分が甘えてしまうと、
必然的に夕陽が昴に甘える時間が減ってしまうとは誰もがすぐに気づくというのに
朝陽がそれに気づいたとかそんな描写がほとんどない。
あまつさえ「自分が昴に頼るのは母親役を演じる自信が戻るため、つまり結局は夕陽のために甘えている
などと考えているのがどうにも理解しがたい論理飛躍だと感じました。
いままで昴の隣にいたから生きてこられたと思っている夕陽にとっては、
姉が母親役になることよりも、昴が自分の隣いることのほうが大事だと思うのは当たり前。
物語は当然のように夕陽が二人の関係に絶望して…という展開になるわけですが、
頭脳明晰で今まで昴も含め家族を暖かく見ていた朝陽ももちろん、
幼少からほとんどの時間を夕陽と共に過ごしていた主人公も
この夕陽の感情に気づけなかったというのは何度もいうけれども本当に解せない。
またこのルートの結末も凄くご都合主義的な終わり方で本当にやっててイライラしました。
本当にこのルートはこの物語を見る上で必要だったのかと今でも疑問に思います。


その後にやった御波ルートは予想通りのシナリオで安心して楽しめただけにやはり朝陽ルートがもったいない。
Afterは…確かにノーマルをやった直後にやっていればもっと感動できたんだろうなぁと残念でしたw
まあもちろんただAfterをやるだけでも十分感動できたんですけどね。
というわけでシナリオに関しては日向姉妹だけ微妙だったのでまあ80点という所でしょうか。


そしてこのゲームのセールスポイントでもある目玉が植田先生のグラフィック
グラフィック監修も植田先生がやっただけあってかなり一体感のある映像でした。
立ちキャラから背景、一枚絵に至るまで統一感があってもう文句なしです。
エロシーンもあまり期待していませんでしたが、ほぼ1キャラ3シーン用意してあり、
シチュエーションも様々用意してあったので意外に良いものだったと思います。


もうひとつの売りであったのが音楽
主題歌は作曲・高瀬一矢、歌・川田まみというI’veコンビ。
最近の低迷してる高瀬作曲中では割と上出来な曲だったと思います。
BGMとED曲を担当したのが個人的に注目している井内舞子さん。
田舎らしい落ち着いた曲から、一変して暗い曲までとても雰囲気を出していたと思います。
ED曲はキャラごとに分かれていて、I’ve担当はもちろんノーマルエンド。
他は中原涼、WHITE-LIPS、eufoniusがそれぞれを担当(eufoniusだけ2曲担当)。
こちらもかなり評価は高く、期待して損は無い出来だと思います。


あとこのゲーム全体を通して言わざるを得ないのが魅力的な脇役の存在です。
とりあえず主人公の父・葦野竜と主人公と一緒に温泉堀をしている老人・八島宗一郎の二人がいないとこの物語が成り立たないといって良いほど重要な部分を占めています。
いろいろなエロゲーをやってきましたが、やはり脇役に魅力的な男キャラがいると
それだけで物語が一気に引き締まって面白いものになると思うのですがどうでしょうか。


以上のようにいろいろと語ってまいりましたがとりあえず総評をすると、
85点というのが自分の評価です。
ただ自分がどれくらい楽しんだかといえば90点くらいつけても良いんですが、
上記の通りテキスト、シナリオ、共に今ひとつの部分があったので減点させていただきました。
しかし物語全体を通してみるとノーマル→Afterの流れは秀逸ですし、
青葉、御波といった非常にキャラ、シナリオ共に魅力的なものあったのは事実です。
ちょっと暗めでも良いからやってみたいという人は是非やってみることをオススメします。


ちなみに自分が一番好きなキャラは…もう今更ですがダントツで青葉ですw
ただの「男友達のような女友達」から恋愛関係に発展する過程というのはある程度容易に想像できるものですが、このキャラに関してはその部分が非常に複雑且つ丁寧に作られていてとても楽しめました。
もちろんポニーテールでビジュアル的にも自分のストライクゾーンど真ん中ですしね!w